夜風に当たりながら地図を眺めていると、テントの方から物音がした。ディランは手に持っていたものを折りたたみ、テントの中の様子を見る
ディラン 「あぁ、よかった。気分はどうかな」
先日、森の中で倒れていたその人間はようやく目を覚ましたようだ。腹をおさえながら彼は体を起こす
「こ、こは…?」
丸一日使わなかったであろう喉から出た掠れ声。状況を確認するかのように彼は自分の腕や腹に巻かれた包帯を見る
そして隣に置いてある元々着ていた服を手に取った
服とは呼べなくなったボロ布だとわかるとすぐに戻したが…
ディラン 「テントの中だよ。森で君が大怪我を負ったまま倒れていたから__」
話している途中で彼はのそりと動き出し、テントから出た
うっ、と彼から呻き声が上がったのでディランが慌てて支える
ディラン 「まだあまり動かない方がいい…可能な限り応急処置をしただけだから、かなり痛むと思うよ…」
特に腕の傷は酷くてね…と付け足す
テントを出れば見えるのは広がる星空と、風に吹かれて波をうつ平原。裏では川のせせらぎが聴こえてくる
彼の黒髪が風に揺れた
ディラン 「すまないね…ここ周辺は村がなくて野宿するしかなかったんだ」
「…そうか」
彼がぽつりと呟くと、後ろから「先生」と音葉が声をかける
振り返れば、何匹もの魚が串刺しされた枝を持って音葉が川の方から歩いてきていた
ディラン 「今から丁度晩飯にするし、焚火を囲みながら色々と話した方が良さそうだね」