乾燥した砂漠地帯を馬竜に揺られながら進む三人の姿が、遠くから見える。
汗すらもすぐに蒸発してしまうような乾ききった暑さ。
炎照らす蒼穹の下、日照りが砂面に反射しつい目を細めてしまうほどに一帯が眩しい。
風に煽られた砂が舞い上がり、まるで踊るように空中を舞っていた。
三人が目指すのは、砂漠地帯の中心にそびえ立つと言われる神殿跡地だ。
しかし、その前に彼らは、神殿跡地から少し離れた場所に設営された拠点に立ち寄ることに決めた。
設営地に到着すると、そこにはまばらにテントが立ち並び、辺りには砂の匂いが漂っている。
千年以上前の歴史が眠っている可能性がある遺物。
学者達が研究せずにはいられない代物なのだろう。
こうして毎日絶えず足を運びに来る人達がいるのだ。
ディランに招待状を送ったのもその一人であるのだが…
その人に挨拶しに行こうとディランは一足先に馬竜から降りると
丁度、190cmほどある体格の良い男がテントからのそりと出てきた。
ヨナ 「ディラン教授、お久しぶりです!」
ディラン 「ヨナくん!久しぶりだね。招待してくれてありがとう。」
その人物はディランの旧知であり、彼が教授呼びされる光景にアダムは面食らったような表情を浮かべる。
アダム 「先生としか聞いてなかったが…」
音葉は教授というものがそもそもあまりよくわかっていない様子。
ヨナ 「外は暑いっすからね、どーぞ中に入ってください」
ヨナはディランと握手を交わしたあと、三人をテントの中に招き入れた。
照りつける日差しの圧迫感が和らぎ、体感温度が下がっていくのを感じる。
テントの中は、まさに研究者の領域だった。
壁には乱雑なメモが貼られたコルクボードがかけられており、謎めいた彫像や石碑の写真が所々にクリップされている。
テーブルの上には研究ノートや写真、骨董品が並びその横には革製の手帳が置かれていた。
おぉ、と感嘆の声をあげるディランに、ヨナは「教授に見てもらいたいものがあって…」と骨のような装飾品を見せる。
音葉も好奇心に動かされ覗きに行くが、アダムだけが一人
違うものに気を取られていた。
__何だ、この匂い…いや、魔力か…?
アダムが眉を顰める。
ほんのわずかだが、馴染みのない魔力を感じ取ったのだ。
海陸空、氷炎雷…音葉の核属性とも違う…
異質な感じだが、どこか懐かしいような。
ヨナ 「マジか!」
ヨナの声にアダムは思考を引き戻された。
ヨナ 「二千年前の!?」
ディラン 「軽く見ただけだから断定はできないけど、保存状態がいいし…詳しいところで調べてもらうといいよ。」
テンションが目に見えてあがるヨナはその興奮とは裏腹に丁寧に遺物を保管する。
どうやら神殿跡地で見つけたものをディランに色々と鑑定してもらってるらしい。
その後、専門的な話題を語り合い、情報交換を行ってから、三人は神殿跡地を直接見に行くことになった。
ヨナ 「いやぁ本当に感謝!俺ぁまだ色々とまとめないとだから着いていけないが、しばらくここに滞在してるから何かあれば頼ってください!」
ディラン 「こちらこそありがとうヨナくん。研究頑張ってね。」
馬竜に乗り遠くに見える神殿跡地を目指す三人。
日照りに晒され揺られながら、アダムは先程感じた魔力への違和感を拭えないままでいた。
__昔からある神殿周辺だから特殊な魔力が漂っていたのかもしれん…。神殿跡地に着けば何かがわかるのか…?